
不動産の購入した時に、売却をする時のことを考えている人も少ないのではないでしょうか?
ですが売却というのは、様々なタイミングで訪れます。その一つが、離婚による不動産売却です。
結婚をして不動産を購入し、一生ここに住もうと考えていたのに……ということもあるでしょう。その場合、売却をすることは考えていないはずです。
でも時間が過ぎ、離婚が決まったら、不動産をそのままにしておけないこともあります。
今回は離婚による不動産売却について、ご紹介していきます。
不動産を所有した夫妻の離婚で名義変更が必要な場合
離婚を考えている時に、不動産の所有者を変えることを検討している人もいると思います。
例えば、夫名義になっているものの離婚後は妻が住むことになっていたり、妻名義になっているものの離婚後は夫が住むことになっていたり、夫婦名義になっているものの離婚後は夫もしくは妻が住むことになっていたりするでしょう。
ではこういう場合、不動産の名義変更は離婚前と離婚後のどちらで行った方がいいのでしょうか?
双方でかかってくる税金が変わってきます。

・離婚前
離婚前に不動産の名義変更を行うと贈与税がかかります。
ただし、名義変更を行う不動産が自宅なのであれば、配偶者控除を受けることができるため、それによって税額を減らすことができます。
場合によってはゼロ円になることもありますが、配偶者控除を受けるためには、確定申告をしなければいけないため、手続きに手間がかかると言えるでしょう。
・離婚後
離婚後に不動産の名義変更を行う場合には贈与税はかかりません。
ただし、譲渡所得としての課税が発生する可能性があります。
これは購入時よりも不動産の価値が上がっている場合に発生するものです。
ちなみに離婚前であれば、譲渡所得による課税はありません。
離婚に伴う財産分与
離婚をすると財産分与が行われます。
財産分与には3種類(清算的財産分与、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与)がありますが、基本的に財産分与というと清算的財産分与を指すのが一般的のようです。

ちなみに3種類の説明をすると下記になります。
清算的財産分与:結婚をしてからできた夫婦の共有財産を分配すること
扶養的財産分与:離婚をした後、片方の生活維持を目的とした財産の分配のこと
慰謝料的財産分与:離婚の原因となった方が慰謝料として財産を分配すること
扶養的財産分与と慰謝料的財産分与は財産分与でも少し傾向の違うものですが、「財産分与」の一言の中に含まれています。
また、「清算的財産分与」は不動産の分配を受けた際でも不動産取得税がかかりませんが、「扶養的・慰謝料的財産分与」は不動産取得税がかかるという違いがあります。
離婚の財産分与 不動産

住んでいる家(不動産)も財産分与の範囲内に入ります。
名義が夫と妻のどちらかであっても、夫婦名義になっていても関係ありません。結婚後に購入したのであれば、それは清算的財産に含まれるからです。
離婚の際に、不動産を売却するのであれば、売却金額を不動産会社に査定してもらいましょう。
売却を前提としている場合、不動産会社が無料で行ってくれます。
もし、売却をしない場合は、離婚後もその家に住む方が出ていく方に支払いをすることになりますが、相場価格を参考にしながら夫婦で不動産の価値を決めることができます。
もし、不動産の価値がわからない場合は、固定資産税の評価額を参考にしたり、インターネットの売却価格シミュレーター(入力すれば評価額が出てくるもの)を使って出すこともできます。
離婚時の財産分与の割合は?
財産分与は、原則的に2分の1ずつ分けます。
財産分与の割合、基本の考え方

財産分与の2分の1というのは、共働きだった場合だけではありません。
夫が働き、妻が専業主婦だった場合も同じです。
結婚をしてから夫が稼いだ給料、積立金、家具、日用品などもすべて共有財産となり、2分の1でわけます。
ただし、結婚前から持っていたものや相続、贈与によって得たものに関しては共有財産とはみなされません。
また財産分与は、夫、妻のどちらからでも請求できますし、離婚の原因を作った方からでも請求できるものです。
財産分与の割合が2分の1にならないケース
協議離婚をした場合は、2人の間で分配の割合を話し合いで変えることも可能です。
調停離婚、裁判離婚になった場合は、2人で話し合いができないとみなされ2分の1が適用されます。
また、夫婦のどちらかが一般よりも高収入を得ている場合や、夫婦のどちらかの浪費癖によって極端に財産が減っている場合なども、2分の1が適用されないこともあります。
財産分与の金額は?
財産分与はお伝えしてきた通り、2分の1という割合は決まっていますが、共有財産がどれだけあるのかという点では、家庭ごとに違うため相場の金額はありません。
ただ、結婚期間が5年未満の場合は財産分与額が100万円を切る夫婦が半数を占めているというデータもあります。
反対に、結婚期間が20年以上となると100万円を切る夫婦は1割未満で、1000万円以上が半数いるとのことです。
結婚期間が長くなればなるほど、共有財産が増えるのは当然のことですし、結婚期間が短い場合は、不動産を持っている家庭も少ないため、金額が低くなってしまうのでしょう。
子どもがいる場合の財産分与の割合
離婚をする際、子どもがいるとどうなるのでしょうか?
例えば夫婦で子どものために貯金をしていたり、学資保険に入っていたり、児童手当をもらっていたりすることもあります。
実はこれも財産分与の対象となってしまいます。
ですが、離婚をしたからと言って子どもとの縁が消えるわけではありません。基本的には夫婦間の合意によって子どものための貯金などは、養育費に充当させ、親権を持つ方に渡されるケースが多いそうです。
離婚協議書のサンプル

離婚をする前には、「離婚協議書」というものを作ります。
これは、離婚方法や条件などを取り決めるための書面です。
離婚方法とは、誰が離婚届を出すのかということを指し、条件とは、慰謝料、財産分与、年金分割、子どもがいるのであれば親権、養育費、親権のない方と子どもの面会頻度などを指します。
これらを離婚前に取り決めておくことで、スムーズに離婚をすることができます。
離婚協議書のサンプルも用意しました。下記からダウンロードしてください。
これはあくまでサンプルですので、離婚専門の弁護士に相談しながら作成した方がいいでしょう。
また離婚協議書を作成するときに法的拘束力が認められる内容にすることがポイントです。
そうしていれば、問題が起きた時にトラブルを未然に防ぐことができます。
家の査定と家を売却する方法

離婚による家の売却をすると決めている場合でも、必ず家の査定から始めましょう。
急いでいる場合でも、不動産屋に相談をしに行くと査定から始めてくれます。
家の査定が終わってから、売り出し金額を決めます。
査定額がそのまま売り出し金額になるわけではありません。
もちろん、査定額をそのまま売り出し金額にしてもいいですし、少し色を付けてもいいですし、少し安くするのもいいという意味です。
その後、家の買主が現れたら、その人と売買価格の交渉が始まります。
買主によっては、値引き交渉をしてくることもありますが、応じるかどうかは売主次第です。
それでいいと思えば売買契約をし、この人には売りたくないと思えば、次の買主が現れるまで待つということもできます。
また、家の売却には、不動産屋による買取という方法もあります。
不動産屋と売買する場合には、価格が安くなることもありますが、買主が現れるのをまったり、買主との売買交渉をしなくてすむため、スムーズに事を運ぶことができます。
価格よりも、とにかく早く売りたいという場合には、不動産屋による買取も検討してみてもいいかもしれません。
家を売らないで住み続ける場合は名義変更

離婚をする際、家も財産分与範疇に入りますが、必ずしも売らなければいけないというわけではありません。
「離婚の財産分与 不動産」の項目で書いた通り、夫婦のどちらかが住み続けることも可能です。
仮に夫が住み続けることになった場合、家の評価額を夫婦で決め、その半額を夫が妻にお金で支払うことになります。
その際に忘れてはいけないのが名義です。夫が住み続けるのであれば、夫名義になっている場合はそのままでもいいですが、夫婦名義になっている場合には、名義変更をしなくてはいけません。
夫が住み続けるのではなく、妻が住み続ける場合も同じです。
その家に住む人だけの名義に変更しましょう。
家の住宅ローン
離婚する際の家について考えておかなければならないのが住宅ローンです。
基本的に家を購入して、住宅ローンを組まずに一括で購入するということは稀です。
離婚をする時に、住宅ローンが残っているか、残っていないかというところも重要なポイントになります。
家の住宅ローンはマイナスの共有財産になるため、夫婦で2分の1ずつ分けるということはありません。住宅ローンを組んでいる方が、離婚後も払い続けることになります。

ただし住宅ローンがある場合は、家の評価額が4,000万円で住宅ローンの残りが3,000万円だった場合、4,000万円から3,000万円を引いた1,000万円が共有財産となり、夫婦で500万円ずつ分けるという形になります。
ただ、家の評価額が2,000万円でローンの残りが3,000万円だった場合はマイナス1,000万円となりますが、夫婦でマイナス500万円ずつわけるということはなく、住宅ローンを組んでいる方が1人で払い続けることになるということです。
また、夫婦で購入した家の場合、住宅ローンは夫が組んでいるものの、連帯保証人として妻が契約していることがあります。
離婚後、夫が支払いを辞めた場合、妻が支払いをしなければいけなくなることになりますので、その辺りもしっかりと相談をした方がいいでしょう。
さらに連帯保証人ではなくペアローンで組んでいる場合は、それぞれに返済義務がある状態です。
離婚したあとに相手が返済を継続してくれる保証がないので、離婚の協議時に精算しておく必要があります。
または、金融機関に相談の上、不動産を保有する側の単独名義になるように借り換えしておいた方がよいでしょう。
ただこれらは、住宅ローンが残っている場合の話です。
住宅ローンが残っていないのであれば、特に気にすることはありません。家の評価額が4,000万円であれば、2,000万円ずつ分けることになります。
財産分与をスムーズに進めるために

以上が、離婚による不動産売却と財産分与についてでした。
財産分与をスムーズに行うためには、まずは何が財産分与にあたるものなのかという把握と、財産分与の種類を理解しておくことが大事です。
その上で、不動産を売却するのであれば、いつから準備を始めるのかも考えたほうがいいでしょう。
離婚をすることで、しなければいけないことはたくさんありますが、財産分与で損をしたくないと思うのなら、しっかりと勉強をしてから臨むことをお勧めします。